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インド地下鉄工事 ボスは日本人女性 「トンネル貫通の光…格別」(産経新聞)

 日本の政府開発援助(ODA)の支援を受けて2006年に開通して以来、インドの首都ニューデリーで生活に欠かせない交通手段となっている地下鉄「デリー・メトロ」。現在も続くニューデリーと周辺地域をつなぐ延伸工事の現場には、唯一の日本人女性として工事現場を取り仕切ってきた土木技師、阿部玲子さん(46)の姿がある。約250人のインド人男性を配下に、メトロ完成に向けて奮戦中だ。(ニューデリー 田北真樹子)

 「セーフティー・ベルト!」

 ニューデリー市中心部に近い全インド医科大駅の地下構内。安全帯を着け忘れた作業員に、阿部さんの注意が飛ぶ。

 阿部さんは総合建設コンサルタント会社「オリエンタルコンサルタンツ」の次長。小柄だが存在感は抜群で、現場に現れると、座って談笑していた作業員が気まずそうに動き出す。

 「私が来ると、『マダムが来た』という合図に、ピーって笛が鳴るんですよ」と阿部さん。「私を怖がることで、安全意識が高まるのなら、喜んで鬼になります」と言い切る。

 阿部さんは、08年1月から今年1月まで、デリー・メトロのトンネル掘削工事を担当。いったん日本に帰国したが、2月から安全対策技術導入のため、再び戻ってきた。

 日本は地下鉄建設などに、1996年度からこれまで約3748億円を円借款として供与している。地下鉄の利用者数は平日で105万人。第2フェーズ工事(約83キロ)が完成し、全6線が開通すれば、デリー・メトロは総延長約143キロとなり、大阪市営地下鉄を抜き、東京メトロ8路線(183・2キロ)に迫る。

 阿部さんは山口県下松市出身で、関門海峡を見ながら育った。「いつかトンネルの掘削をやってみたい」という思いを抱き、山口大工学部に入学した。学部初、唯一の女性だった。

 しかし、「女性だから」という理由で、卒業時に就職口はなく、神戸大大学院を修了しても、就職試験さえ受けられなかった。周囲の支援もあり、中堅ゼネコンに入社したが、トンネル工事には携われず、現場に出ていく同期の男性を横目に落ち込んだ。

 「これでは行き詰まってしまう」と思い、英語を猛勉強し社内留学でノルウェーへ。だが、ノイローゼ状態になり、財布とパスポートだけを手に成田行きの飛行機に飛び乗った。成田空港に着いた途端、われに返り、そのままノルウェーにとんぼ返りしたことも。

 その後、台湾や中国、カタール、インドと、常に海外の現場で活動してきた。同僚のインド人男性は「仕事への集中力がすごく、尊敬する」と評価する。

 阿部さんは「トンネルが貫通して、向こうに光が見えたときのうれしさは格別」という。就職難で悩む女子学生に「あきらめるな」とエールを送る。阿部さん自身、「プロジェクトのトップを張る人材になる」ことを目標に、日々、経験を積み重ねている。

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